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2010年11月20日

2010年11月20日 日本潰瘍学会にて発表
ブロッコリースプラウトの「スルフォラファン」に高い抗ピロリ菌作用を確認
母乳、緑茶、ウコン由来の成分と比べ、最も効果が期待できる

 スルフォラファンを含むブロッコリーの新芽(スプラウト)には、抗ピロリ菌作用が確認されていますが、同じく抗ピロリ菌作用が 報告されている食品成分、ラクトフェリン(母乳由来)、EGCG(緑茶由来)、クルクミン(ウコン由来)と比べて、最も効果が高いことがわかりました。本研究結果は、東京理科大学薬学部の谷中昭典教授らによるもので、2010年11月20日に日本潰瘍学会にて発表されました。

【背景と目的】

 ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は、人の胃に棲む細菌で、胃がんの発症に関与することが明らかになっている。そのため、 抗生物質による除菌が推奨されているが、胃炎や胃潰瘍などの 症状がないと保険の適用外となることや耐性菌の出現による 除菌率の低下などの問題点から、食品による除菌に期待が寄せられている。
 現在ピロリ菌の除菌効果が報告されている食品成分として、スルフォラファン(ブロッコリースプラウト由来)、ラクトフェリン(母乳由来)、EGCG(緑茶由来)、クルクミン(ウコン由来)などがある。本研究では、スルフォラファンの作用機構を明らかにするとともに、これらの成分の効果を比較した。

【方法】
食品成分として、スルフォラファン(ブロッコリースプラウト由来)、ラクトフェリン(母乳由来)、EGCG(緑茶由来)、クルクミン(ウコン由来)を 使用し、以下の項目を測定した。

<測定項目>

測定項目 内容
抗ピロリ菌作用(1)感受性 食品成分に長時間さらされたピロリ菌の増殖率
(2)生存率 食品成分にさらされたピロリ菌の生存率
(3)Urease 活性 食品成分にさらされたピロリ菌のダメージの程度
(Urease活性が低いほど、ピロリ菌がダメージを受けている)
細胞のダメージ予防作用(4)接着能 食品成分にさらされたピロリ菌のヒト上皮細胞への接着能 (接着能が低いほど、ピロリ菌がダメージを受けている)
(5)IL-8 分泌率 食品成分にさらされたピロリ菌のヒト上皮細胞への悪影響 (IL-8の分泌が低いほど、ピロリ菌がダメージを受けている)

※(1)Urease活性、及び(5)IL-8については解説を後記。 

【結果】
 対象とした4つの食品成分の中で、効果を示したのはEGCG、クルクミン、スルフォラファンの3つで、ラクトフェリンはどの項目においても効果を確認することができなかった。項目ごとには (1)感受性、(2)生存率、(5)IL-8分泌率で、クルクミンとスルフォラファンが同等に高い効果を示し、 (3)Urease活性(グラフ1)及び(4)接着能(グラフ2)では、特にスルフォラファンに高い効果が見られた。

グラフ1 (3)Urease活性

食品成分にさらされたピロリ菌のダメージの程度。Urease活性が低いほど、ピロリ菌がダメージを受けているといえる。4つの食品成分の中で、スルフォラファンで最も高い効果が確認された。

グラフ2 (4)接着能

食品成分にさらされたピロリ菌のヒト上皮細胞への接着能。 接着能が低いほど、ピロリ菌がダメージを受けているといえる。 クルクミン、スルフォラファンで接着能の低下が確認され、スルフォラファンの50μg/mlでのみ優位差が確認された。

■谷中教授コメント
胃がんのリスクを5倍以上に高めるといわれているピロリ菌ですが、抗生物質による 除菌率は年々低下しており、除菌治療の補完的方法が求められています。それを一般の 食品で行うことを目的に探索した結果、ブロッコリースプラウトに含まれるスルフォラファンに注目しました。 これまでに、スルフォラファンの抗ピロリ菌効果について、スルフォラファンを豊富に含む ブロッコリースプラウトをピロリ菌感染患者に投与する臨床試験を実施し、ブロッコリースプラウトの摂取によって、胃内のピロリ菌数が減り,胃炎が軽くなることが確認されており、この研究成果は、米国がん学会オフィシャルジャーナル「Cancer Prevention Research」2009年4月号に掲載されています。
今回の研究では、スルフォラファンを含めて、抗ピロリ菌作用が報告されている4つの 食品成分(母乳由来のラクトフェリン、緑茶由来のカテキン、ウコン由来のクルクミン、ブロッコリースプラウト由来のスルフォラファン)のピロリ菌に対する抗菌作用を比較しました。 他に、抗ピロリ菌効果が報告されている乳酸菌LG21ヨーグルトについては、LG21は生きた細菌であるために、今回の実験では同じ条件で効果を比較できませんでしたが、今回の実験で、スルフォラファンは、他の食品成分よりも明らかに強い抗菌効果を持つことが確認されました。これまでの研究で、スルフォラファンは他の食品成分とは異なり、私たちの体の免疫能力を高める作用も有することが 明らかになっていますので、他の食品成分よりも強力で確実な胃がん予防効果を持つことが期待されます。

■用語解説
ブロッコリースプラウト
1997年に米国ジョンズ・ホプキンス医科大学教授のポール・タラレー博士が、がん予防研究の過程で開発した野菜。 有用成分スルフォラファンを高濃度に含む。日本では村上農園が同大学とライセンス契約を結び、生産・販売を行っている。

スルフォラファン
ブロッコリースプラウトに含まれる有用成分。体の解毒酵素や抗酸化酵素の活性を高め、がんや様々な疾患の予防効果が期待されている。

ピロリ菌(正式名称:Helicobacter pylori
ヒトの胃に棲みつき、胃炎や胃潰瘍、ひいては胃がんの発症に深く関与していると言われる細菌。日本人の約半数、40歳以上の8割が感染していると推定されている。

Urease
尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解する酵素。アンモニアを産生することで胃酸を中和し、胃内にピロリ菌の棲める環境を作る。ピロリ菌の体内で生成されるため、ピロリ菌の状態を表す指標となる。

IL-8
ピロリ菌の害を受けた細胞から放出される物質。分泌量がピロリ菌によるダメージの指標となる。

LG21乳酸菌
正式にはLactobacillus gasseri OLL2716。東海大学医学部の古賀教授らの研究でピロリ菌への効果が確認されている乳酸菌。

■研究者プロフィール

谷中昭典(やなか あきのり)
東京理科大学 薬学部薬学科教授 医学博士


<略歴>
 1985年 筑波大学大学院医学研究科 修了
 1995年 筑波大学臨床医学系消化器内科 講師
 2007年 東京理科大学薬学部 臨床薬理学 教授

<専門領域>
 消化器疾患の病態生理、消化器内視鏡

<研究テーマ>
Helicobacter pyloriによる胃疾患発症機序の研究 食品(ブロッコリースプラウト)による消化器癌予防効果の研究

※村上農園では、2006年から東京理科大学谷中教授に研究助成を行っています。